1月9日(土)17:00
Duke of York Theatre
新年観劇第1作目に選んだのが、この「Ghost Stories(ゴースト・ストーリーズ)」。日常的に劇場前を通っていて何となく気になっていたのと、観客にネタばれを厳しく禁じていて、「keep telling yourself its only a show」なんて言っちゃってるのが、昨年から妙に気になっていたのだ。
TKTSで15ポンド最前列という良席をゲットし、劇場に入ると…意味ありげな数字が書かれたぼろぼろの紙、怪奇事件が報じられている昔の新聞記事、壊れたピアノが。あちらこちらに埃が積もっていたり(もちろんわざと)、サイドの席がぐちゃぐちゃで立ち入り禁止になっていたりと、とにかく劇場中がうっそうとした雰囲気に満ちている。おまけに鼓動のような効果音がずっと鳴っていて、否が応にも恐怖心を煽る。
そして舞台がスタート。大学の教授らしき人が不可思議な事件についてリサーチした結果を観客の前で語り出す。警備中に意識不明の重体になっている娘さんの声が聞こえる警備員、うっかり人を轢いてしまった(はずの)無免許の青年、もうすぐ生まれてくる子供の部屋で不可思議な現象に出くわす男性…。3人の話を聞くに従い、教授自身の態度も少しずつおかしくなっていく。実は教授には、その昔、忘れようにも忘れられないとある出来事があったのだ、というのがあらすじ。
実はこの芝居、結論から言うと、とても残念な出来だった。上の3つのエピソードが本当にベタで、笑うに笑えないレベルだったのだけれど、これは最後のどんでん返しの複線に違いない、と信じて舞台を観ていた。観ていたのに…最後のオチがこれまたなんともベタだったのだ。実は教授自身は昔の出来事の罪悪感に苛まれ自殺未遂を起こし、精神病院にいた、3人の登場人物は実際には医者や病院の清掃員だった、なんて、日本の小劇場では10年以上も前から当たり前すぎる展開。前から思っていたけれど、イギリスのお芝居は、とても正統派なのが多くて、もちろん素晴らしい作品も多いけれど、奇をてらったもので成功! と思えるものが、あまりない。小劇場新作勝負ならば、日本、余裕で勝つんじゃないだろうか…。
結局この日、一番怖かったのは、始まる前の自分自身の妄想だった(それが劇場側の目的だったのか?)。ちなみに、一緒に観劇した友人は、教授の友人の亡霊に狙いうちされ、目の前に這ってこられたときに声を上げて驚いていた。きっと、あのとき、あの場所で、最も(というより唯一)怖がっていた人間だったに違いない(笑)。