バス停のすぐ近くにあるインフォメーション・センターで地図を手に入れて、まずは宿へ。ちらほら見える古本屋にワクワクしつつ歩いていたら、すぐに見つかった。今回泊まったKilvirtsは、パブと宿が一体になっていて、パブは既にビールを飲んでくつろいでいる人たちでいっぱい。
歩くと床がぎしぎしいう建物は、古いけれどしっかり磨きこまれていて、いい感じに年を重ねている。私たちの部屋は黒光りする柱が三角形に重なる様が美しい、屋根裏部屋。バスタブがなかったのが少し残念だったけれど、ソファや長椅子、チェストなどの調度品も建物にぴったりの年代もので、胸が躍る。
長旅で疲れていたのと、とにかく喉が渇いていたのとで、何はともあれパブで一杯。3種のビールをちょっとずつ楽しめるセットで乾杯! ほんのりレモン味の清涼感あふれるエールがとっても美味しい。
一息ついたところで、散策スタート。このころには澄み切った青空が広がっていて、絶好の散歩日和になっていた。今回は街や古本屋の雰囲気を味わいたいというのが目的で特に下調べをしてこなかったので、適当に歩いて見つけたお店に入ることにしたのだけれど、まず入ったのがここ。
この子供向けの本や絵本の専門店「Rose’s BOOKS」は、以前この街を訪れた人たちのブログなどで見て、ぜひ来てみたいと思っていたところ。小さな店内には、不思議の国のアリスなどおなじみの絵本から時代を感じさせる希少本まで、様々な本がずらり。希少本は、ガラス・ケースに丁寧に陳列されている。
地下にはRupertというクマの絵本のシリーズが。年代をさかのぼるほど、ルパートの顔が人間くさくなってきて、ちょっと不気味。
そして街の目印的な存在の時計台を眺めつつ、次に向かったのは…。
この古本の街をつくり出したリチャード・ブースさんのお店。戦後、衰退の一途をたどっていたこのヘイオンワイが現在のような古本の街として知られるようになったのは、リチャードさんが1960年代に映画館や消防署だった場所を買い取って古本屋にしたのがきっかけ。自らを「キング」と名乗り、イギリスからの独立を宣言するなど、かなり個性的な人物らしい。そんな彼のお店は、タイル貼りの柱がかわいらしい外観。
入り口前の地面には「Richard Booth World’s Largest Secondhand Bookshop」なんていう言葉も記されていたりして、なかなかのPR上手。
中は奥行きがあって、外からは想像できないくらいの広さ。一歩足を踏み入れた途端、友人と「本のディズニーランドみたい」とつぶやいてしまった。希少本を探しに来るコレクター向けというより、本好きの一般人が楽しみながら自分の求める本を探している雰囲気。かなりの年代を感じさせつつも清潔感溢れる店内には、いたるところにソファやベンチがあって、皆あちらこちらで座り込みながらじっくり本を選んでいる。
ガラス張りの天井から日が差し込む2階。自分の好きな文学作家の本を並べて見比べる若い女性や、古い楽譜を丹念に調べる初老の男性など、お客さんの幅は本当に広い。
2人とも、2軒目にして既にテンションは最高潮になってしまった。
(続く)