2日目。早起きだけど目覚めもすっきり。眩い朝日が差し込む食堂で朝食をとる。雨女で鳴らしている私にしては珍しく、2日ともに素晴らしく天気に恵まれている。友人はフル・イングリッシュ・ブレックファスト、私はスモーク・サーモン&スクランブルエッグ。フルーツやトースト、コーヒーもたっぷりで、実に気持ちの良い朝食タイム。どこか非日常の空気が漂う宿の朝ごはんは、私にとっては旅行の醍醐味の一つだったりする。
日光の加減で暗くなってしまったけれど、味はとても良かった。
おなかいっぱいになったところで散策スタート。昨夜本屋マップをチェックして、行ってみたいお店数件をピックアップしていたので、そちらへ向かう。まず行ったのは、「hay cinema bookshop」。無骨な棚に入った古本たちが、朝の清涼な空気とともに出迎えてくれた。
前庭の本棚にある本はすべて1冊1ポンド。
どことなく日本の図書館を思い起こさせる1階は、天井まである本棚がぎっしりひしめき合っている。2階にはガラス張りの小部屋もあって、「バッグの持ち込み禁止」なんて書かれていた。そしてみしみし音を立てる床を踏みしめながらあちらこちら見ていたら、装飾が美しい本が並んだ本棚を発見。
一冊開いてページをめくってみると、透かしのラインが清々しい紙のざらりとした質感に、指が心地良さを覚える。
その後は、本屋めぐりは一旦お休みして、インフォメーション・センター近くのフット・パスをちょっとだけ散歩。青々とした芝生の中、幾度となく人が歩いてうっすらとできた自然の歩道をてくてくと。近くでは羊が一心不乱に草を食んでいる。バスの中でも感じたのだけれど、この辺りの羊はロンドン近郊の羊と比べてもかなりフカフカしている。さぞや暖かい毛が採れるだろう。
実に絵になる木。
民家を抜ける道も綺麗に整備されている。
ちょっとした散歩を楽しんだ後は、再び本屋めぐり。インフォメーション・センターの向かいにある「BACKFOLD BOOKS」は、おみやげ屋さんが隣接している小さな本屋。
壁にくっついた小さくて真っ青な本棚と手書きのボードがチャーミング。
すぐ近くにある「CORNER BOOKSHOP」。ここは雑誌が豊富で、ちょっとマイナーなセレクトが興味深い。
この図鑑、タイトルは何とバドミントン・マガジン。
よく分からないけれど、マニアが喜びそうなラインナップ。
そして昨日、リチャード・ブースさんのお店で聞いた「THE KING OF HAY」へ。数年前にヘイ城を売却したリチャードさん、現在は週数回、こちらに顔を出すのだそう。今回はあいにく不在だったけれど、こちらでつい、リチャードさんのお茶目な写真を使ったポストカードを購入。
店内は小さめ。リチャードさんの自伝も置かれていた。
昼食は、昨日訪れたリチャードさんのお店に付設されているカフェで。本屋スペース同様、昔の趣を今に残しつつ、すっきり改装された店内の壁には、「武器よさらば」「百年の孤独」などのポスター。メニューのデザインも数パターンあって気が利いている。
高い天井が気持ち良いカフェ内部。
私が頼んだのはパンケーキ。友人はウェールズらしいものをとウェルシュ・レアビット(ウェールズ風チーズ・トースト)。パンケーキはもうちょっとしっとりしている方が私好みだけれど、酸っぱいヨーグルトとメープル・シロップとのバランスが良かった。
カフェラテもなかなかのお味。
食器類や毛布の置き方にもセンスを感じる。
そして食後は最後の1軒。「the poetry bookshop」は、専門性が明確なだけに、所蔵本のセレクトには自信がある様子。お店のご主人は、私たちの後に入ってきたお客さんとずっとあれこれ専門的な話をしていた。詩は全く詳しくないのだけれど、こちらではディスプレイにただただ感心。階段の途中の壁にディスプレイされた本は、形や大きさも見事にぴったりはまっている。ベケットの本が何冊かあって欲しかったのだけれど、ちょっとお高めだったので断念。
端正な佇まいのthe poetry bookshop。
隙間にうまく合わせたディスプレイの妙。
背景の色との調和が何ともいえない。
あとはアンティーク・ショップを数軒拝見。この街にあるお店は、アンティーク・ショップにしろ、服やインテリアのショップにしろ、観光地っぽさが皆無な、実にセンスの良いところが多かった。今回は本屋中心になってしまったけれど、こうしたお店を見て回るのもきっと楽しいと思う。
この日はバンク・ホリデーだったので、ヘレフォード行きのバスは一日わずか3本。名残おしいけれど、14時半を逃すと次は18時台になってしまうので、ここで散策終了。最後にバス停のそばにある製本屋「THE BLACK MOUNTAINS BINDERY」にちらり立ち寄る。工房とオフィスが合わさったような空間で、入り口ではこちらのお店で作られたとおぼしきノートが販売されていた。こんなノート、もったいなくてなかなか書き込みなんてできないんじゃないだろうか。
薄いピンクの壁に深緑の看板が映える。
小さな立て看板もとっても洒落ている。
というわけで1泊2日のヘイオンワイ旅行はこれで終わり。ヘイ城のあの風景を見られなかったのはやっぱり残念だったけれど、それを補って余りある素敵な素敵な時間を過ごすことができた。今回は本屋1軒1軒の空気を味わったから、次来たときには、本1冊1冊との対話を楽しんでみたいな。