2013-06-04

憧れの風景――ヘイオンワイ (Hay-on-Wye) 1



ずっと心に残っていた風景があった。青空の下、古城を背に古い本が詰まった本棚が静かに佇む、そんな景色。日本にいたとき、テレビで観たその姿はとても印象的で、いつか自分の目で見てみたい、そう思っていた。

ウェールズにある古本の街、ヘイオンワイ(Hay-on-Wye)。イギリスに住むようになって、日本にいるときよりも距離的には近くなっていたけれど、それゆえに「いつか行ける」と思い、なかなか実際に行動に移せなかった。そして今回、3連休を利用して、ついにこの古本の街に行くことができた。

計画性のない私。今回も2、3日前に列車やホテルをバタバタと予約。ロンドンからヘレフォード(Hareford)まで列車で3時間半程度(乗り換え1回)、そこからバスで約1時間。少なくともこの時期、列車は直行がなくて、時刻表をにらみつつ、パズルをはめ込むみたいにプランを練った。

そして当日、ロンドンはパディントン駅。友人と朝7時30分に待ち合わせ。パンとコーヒーを買って(私は列車で食べる朝食が好きだ)、列車に乗り込む。


8時ごろ、First Great Westernの列車でまずはWorcester Shrub Hillまで約2時間半の行程。そしてLondon Midlandの列車に乗り換えて12時少し前にヘレフォードに到着した。車窓からは、時折晴れ間がのぞく曇り空。辺り一面に咲く菜の花の黄色がとても春らしい。一つ些細だけど残念だったのが、First Great Westernの座席が狭かったのと、飲み物置きがなかったこと。いつもはVirginに乗ることが多いのだけれど、かなりの不便さを感じた。


 そしてヘレフォードからバスが出るのは、約1時間後。待ち時間は昼食を食べることに。駅まわりは何となく閑散としていて、大きなスーパーとケンタッキー・フライドチキン、古びた中華レストランくらいしか見当たらない。結局、イメージしていたのとはかなり違うな、などと思いつつ、ケンタッキーで地元の若者に紛れてチキンをほおばる。

バス停は少し奥まっていて分かりずらかったけど、ケンタッキーのすぐそばにあった。これまた閑散としていて、本当にバスが来るのか、ちょっと不安になるほど。でもきちんと時間通りにやって来て、無事、最終行程のバスの旅に。

バスは普通の乗合バスで、細いでこぼこ道をものすごいスピードで走っていく。途中、馬フン(牛か羊かも?)のすさまじい匂いが鼻を刺す中、約1時間、飛ばしっぱなし。

そしてようやく、ヘイオンワイに到着。バスを降りた瞬間、360度広がる大自然と目の前のかわいらしい石造りの建物に一気に気分は高まる。ブレコン・ビーコンズ国立公園の中に位置していると聞いていたけれど、本当に自然の真ん中にぽつんと小さな街が浮かんでいる感じだ。



(続く)